近年、採用競争が激化し、「求める人材から応募がこない」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった課題を抱える企業が増えています。こうした状況の中で注目されているのが 「採用ブランディング」 です。
採用ブランディングは、自社の魅力を発信し、ターゲット人材を惹きつける手法として多くの企業が導入を進めています。しかし、「具体的に何をすればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、採用ブランディングのメリット・デメリットや具体的な手順をわかりやすく解説します。成功事例も紹介するので、「採用活動の成果を高めたい」「自社の魅力を効果的に伝えたい」と考えている人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
採用ブランディングとは?
採用ブランディングとは、企業の強みや魅力を一貫して発信し、求職者に明確なイメージを持たせる採用手法のことです。
そもそもブランディングとは、自社のブランドに対する信頼や共通のイメージを築き、他社と差別化を図るための戦略を指します。これを採用活動に応用し、求職者に「この会社で働きたい」と思わせるように自社をブランド化するのが採用ブランディングです。

少子高齢化や働き方の多様化により、企業の採用競争は年々激しさを増しています。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」によると、 51.0%の企業が正社員不足を感じているとわかりました。

出典元:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」
こうした状況のなか、自社に合った優秀な人材を確保するために、採用ブランディングに取り組む企業が増えています。
採用ブランディングの5つのメリット
採用ブランディングには多くのメリットがあります。代表的なメリットは以下の通りです。
- 採用ミスマッチの減少
- 質の高い母集団形成
- 採用コストの削減
- 競合他社と差別化できる
- 従業員のモチベーションが向上する
ここからは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
採用ミスマッチの減少
採用ブランディングを行うと、求職者は企業の魅力や文化を事前に理解したうえで応募するため、採用ミスマッチが減少します。
入社後に「思っていた環境と違う」といったギャップを感じるケースが少なくなり、早期離職のリスクも軽減。企業の価値観やビジョンに共感する人材が集まるため、長期的に活躍できる人材の定着につながります。
質の高い母集団形成
採用ブランディングの強化によって、自社の理念や社風に共感する求職者からの応募が増えることが大きなメリット。
自社に魅力を感じない人は自然と離れていくため、応募の段階で適した人材が選別されます。単に応募数が増えるだけでなく、自社にマッチした人材が集まりやすくなり、質の高い母集団を形成できるのです。
採用コストの削減
ターゲット層からの応募が増えれば、求人を出しても応募が来ない状況を防げるため、不要な広告費をかける必要がなくなります。さらに、リファラル採用や自社の採用サイトを通じた応募が増えることで、採用にかかる費用の負担を軽減。
適切な人材が集まりやすくなるため、選考にかかる時間や労力も削減され、採用活動全体のコストを抑えられる点がメリットです。
競合他社と差別化できる
自社の魅力や強みを明確にすることで、競合他社と差別化できます。
採用ブランディングの核となるのは、創業者の想いや価値観が反映された企業の理念です。これを軸にブランディングを行うと、自社ならではの魅力が際立ち、求職者に対して他社にはない独自の価値を伝えられます。
採用市場における競争力が高まり、求職者の心に残る企業として認知されやすくなります。
従業員のモチベーションが向上する
採用ブランディングは、新入社員だけでなく既存社員のモチベーション向上にもつながります。自社の魅力を発信する過程で、従業員自身が企業の価値や理念を再認識でき、企業への愛着や業務への意欲が高まるからです。
採用活動の枠を超え、社内のモチベーション向上や組織の活性化にもつながるため、長期的な企業成長にも欠かせない施策です。

採用ブランディングのデメリット・注意点
採用ブランディングには以下のようなデメリットと注意点があります。事前に把握しておきましょう。
- 企業全体で取り組む必要がある
- 効果を実感できるまでに時間がかかる
- 自社の弱みは伝え方を工夫する
企業全体で取り組む必要がある
採用ブランディングは、採用担当者だけでなく、現場の社員や意思決定者を含めた企業全体で取り組む必要があります。採用担当者と現場でターゲット像が異なると、適切な人材の確保が難しくなるからです。
たとえば、人事部が若手採用を重視する一方で、現場が即戦力を求めている場合、発信する情報がばらつき、採用ブランディングの効果を十分に発揮できません。
そのため、企業全体で採用に対する共通認識を持ち、一貫したメッセージを発信することが重要です。
効果を実感できるまでに時間がかかる
採用ブランディングは効果を実感できるまでに時間がかかる点がデメリットです。
自社の魅力や企業理念を社外に浸透させるには、継続的な情報発信が欠かせず、一定の期間を要します。しかし、ブランディングが定着すれば、応募者の質が向上し、採用コストの削減や選考の効率化といった大きなメリットを生み出します。
すぐに成果を求めるのではなく、長期的な視点で取り組むことが重要です。
自社の弱みは伝え方を工夫する
自社の弱みを隠すために、実際と異なる情報を発信すると、ギャップが生じて早期離職につながる恐れがあります。しかし、課題をそのまま伝えるだけでは、ネガティブな印象を与えかねません。
大切なのは、事実を正直に伝えつつ、前向きな視点で表現することです。
たとえば、「研修制度が整っていない」 という課題がある場合、「研修は少ないが、実務を通じて成長できる」と伝えれば、自主性を重視する人にとって魅力的に映ります。
課題を隠すのではなく、伝え方を工夫することで、ミスマッチを防ぎ、長く活躍できる人材を採用できます。
採用ブランディングの成功事例
採用ブランディングで業界イメージを払拭し、応募数が向上した事例
IT業界のSES企業A社は、ブラック企業・低賃金・スキルが身につかないなどの業界イメージの影響により、応募数が低迷していました。
株式会社RYOMAの支援により、採用ブランディングを進める中で「社員同士の学び合いが活発で、未経験者も成長しやすい環境」という自社の強みを再認識。この強みを軸に、プログラミング研修やメンター制度の充実を前面に押し出し、未経験者が安心して成長できる環境を訴求しました。
さらに、SNSを活用し、研修風景や未経験から活躍する社員のストーリーを発信。キャリアチェンジ事例を紹介し、異業種からの転職者が挑戦しやすいよう心理的ハードルを下げる施策を実施しました。
その結果、エントリー数が前年比2倍に増加。さらに、研修を受けた新入社員の定着率が90%以上となり、離職率の低下にも貢献しました。
社風の発信で面接通過率が1.5倍に向上した事例
観光サービス業を展開するB社は、一定の応募数はあったものの、面接時のミスマッチや早期離職が多く、人材の確保が課題となっていました。
そこで、株式会社RYOMAの採用ブランディング支援を受け、「多様な人々や価値観を受け入れる社風」を強みとして発信。社長が理念を語る朝礼の様子をSNSで公開し、会社の価値観を求職者に伝える施策を実施しました。
さらに、多様なバックグラウンドを持つ社員の活躍を発信し、職場環境の具体的なイメージを持ちやすくしました。
その結果、マッチ度の高い応募が増え、面接通過率が1.5倍に向上。さらに、入社後の定着率も改善し、離職率が20%低下するなど、採用の質の向上にも成功しました。

採用ブランディングの手順
ここからは、実際に採用ブランディングを行う手順を紹介します。
- 競合企業を分析する
- 自社の強みを明確にする
- ペルソナを設定する
- 採用コンセプトを決める
- 採用手法を決める
競合企業を分析する
採用ブランディングを進めるうえで、まず取り組むべきなのが競合企業の分析です。
競合の採用戦略や魅力を把握せずに進めると、自社の採用活動が埋もれてしまい、十分な成果を上げられません。競合とは同業他社に限らず、求職者が転職先として比較検討する他業界の企業も含まれます。
幅広い視点で分析を行い、自社の立ち位置や強み、差別化ポイントを客観的に把握しましょう。
自社の強みを明確にする
競合分析の次に行うのは、自社の強みの整理です。求職者の目線に立ち、自社ならではの魅力や価値を明確にしましょう。
この際、以下の4つの視点で分析するのがおすすめです。

これらの要素を整理することで、求職者に伝えるべきポイントが明確になり、競合との差別化がしやすくなります。
ペルソナを設定する
自社の強みを明確にしたら、次はペルソナの設定です。ペルソナとは、ターゲットよりも具体的な人物像を指し、年齢や経歴だけでなく、価値観や悩み、生活リズムまで掘り下げて考えます。
明確なペルソナを設定することで、社内で共通のイメージを持ちやすくなり、採用活動の方向性がブレにくくなります。
採用コンセプトを決める
採用コンセプトとは、採用活動全体の「軸」となる基本的な考え方のことです。採用ブランディング成功のためには、コンセプトの設計が欠かせません。
採用コンセプトは、自社の強みとペルソナが重視するポイントを掛け合わせて作ります。
コンセプトがないと、採用担当者ごとに伝える内容にばらつきが生じてしまいます。
明確なコンセプトを設定することで、求職者に統一感のある情報を届けられ、企業の魅力を一貫して発信できるのです。
採用手法を決める
採用コンセプトが固まったら、それをもとに採用フローを構築し、具体的な採用手法を決定します。 ペルソナ、予算、期間、工数などを総合的に考慮し、自社に最適な手法を選ぶことが重要です。
自社にどの手法が最適なのか判断が難しいと感じる企業は、株式会社RYOMAが提供する「オールインHR」におまかせください。企業の課題に合わせて、採用ブランディングの戦略立案から最適な手法の選定まで幅広くサポートします。
採用活動にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ:採用ブランディングを実施して採用活動を成功させよう
採用ブランディングを実施すると、企業の魅力が正しく伝わり、ターゲット人材の確保や定着率の向上、競合との差別化につながります。
しかし、採用ブランディングのノウハウはまだ広く浸透しておらず、成果を得られずに挫折してしまうケースも少なくありません。
「オールインHR」では、採用ブランディングを含め、採用活動全般の課題解決をサポートしています。採用業界の最前線で活躍するプロが企業にぴったりの採用方法をご提案します。採用活動にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


採用プランナー事業部責任者
担当プランナー影山 乃依
経歴
ディップ株式会社360人中新人賞、2社目中途採用企業で最速MVP
外資系SaaS教育企業/システム営業と人事を経験後(株)Nicopを設立しプランナー事業部立ち上げ支援を行う。