社員や関係者のネットワークを活用して、自社に合う人材を紹介してもらうリファラル採用。採用コストを削減し、優秀な人材にアプローチできるため、多くの企業が導入を進めています。
本記事では、リファラル採用について詳しく解説します。「コストを抑えて採用活動をしたい」「リファラル採用のやり方を知りたい」とお考えの方は参考にしてください。
リファラル採用とは?
リファラル採用とは、社員のネットワークを活用し、知人や元同僚などの候補者を紹介してもらう採用手法です。求人広告や人材紹介サービスを利用せずに採用でき、コストを削減できる点が特長です。
株式会社プロフェッショナルバンクの「リファラル採用に関するアンケート調査」によると、リファラル採用は他の採用手法に比べて「採用コストが抑えられる」と答えた企業は79%、「信頼できる人材を紹介してくれる」と答えた企業は69%でした。
リファラル採用は、コストを抑えつつ、質の良い人材を採用したい企業におすすめの採用手法です。
リファラル採用のメリット
リファラル採用には多くのメリットがありますが、代表的なメリットは以下の通りです。
- 採用コストが削減できる
- 転職潜在層にもアプローチできる
- 採用の質が向上する
- 社員のエンゲージメントが向上する
- 定着率の向上につながる
ここからは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
採用コストが削減できる
リファラル採用の最大のメリットは、ほかの求人媒体を利用する場合と比べて、採用コストを削減できること。
ほとんどの場合、求人広告の掲載費用や人材紹介の成功報酬よりも費用が安く済みます。外部コストを抑えられ、限られた予算内でも優秀な人材を確保しやすくなる点がメリットです。
転職潜在層にもアプローチできる
リファラル採用は、転職潜在層にも接触できる点がメリット。転職潜在層とは、転職を視野に入れつつも転職活動を行っていない人材のことです。
たとえば、現職の仕事に満足しているものの「より良い環境で働きたい」と考えている人材など、ほかの採用媒体ではリーチしにくい人材にもアプローチできます。
採用の質が向上する
リファラル採用では、社員がすでに知っている人材を推薦するため、候補者のスキルや人柄を事前に把握した状態で選考を進められます。
求人票や短時間の面接だけではつかみにくい働き方の志向も、紹介者の情報によって補完可能です。入社後のミスマッチが少なくなり、採用の質を高める手段として有効です。
社員のエンゲージメントが向上する
紹介する側の社員は、企業文化や職場環境を理解しており、被紹介者の人柄も考慮したうえで紹介します。その結果、被紹介者は入社後に企業の価値観に合いやすく、職場での人間関係が円滑になりやすいです。
既存社員は自分と似た価値観を持つ仲間と働けることでモチベーションが向上し、エンゲージメントの向上につながります。
定着率の向上につながる
リファラル採用は、人材の定着率を向上できる点がメリットです。
応募者は、入社前に仕事内容や職場環境について詳しい情報を得られ、働く状況を具体的にイメージしやすくなります。これにより、「実際に働いてみたら想像と違っていた」という理由による離職が減少します。リファラル採用は長期的に人材を確保するうえで有効な採用手段です。
リファラル採用のデメリットと対策
リファラル採用には多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。ここからは、リファラル採用のデメリットとそれぞれの対策も紹介します。
- 社員の負担が増加する
- 人材が偏り、多様性が低下する
- 選考時に公平性を保ちにくい
社員の負担が増加する
リファラル採用では、社員が自ら候補者を探して紹介する必要があります。そのため、通常業務に加えて採用活動に時間を割く負担が増える点がデメリットです。
社員が無理なく採用活動に参加できるよう、推薦フォームや進捗管理ツールなどを活用し、負担を軽減する環境を整えましょう。
人材が偏り、多様性が低下する
リファラル採用は、社員が自身の人脈から候補者を推薦するため、既存社員と似た経歴や価値観を持つ人材が集まります。特に、新しいアイデアや柔軟な発想が求められる業界では、人材の偏りが組織の成長を妨げる要因となることがあります。
多様性を確保するには、ほかの採用手法も併用し、幅広い人材を活用する取り組みが必要です。
選考時に公平性を保ちにくい
リファラル採用では、紹介者の推薦が選考に影響を与え、公平性が損なわれるリスクがあります。
たとえば、紹介者が「ぜひ採用してほしい」と強く推す場合、選考担当者がその意見を重く受け止めることで、選考結果に偏りが生じます。
公平性を保つには、客観的な評価を行えるよう、事前に選考基準を明確に設定することが重要です。
リファラル採用の注意点
リファラル採用でのトラブルを避けるために、以下の注意点を確認しておきましょう。
- 社員・応募者の関係悪化に注意
- 紹介報酬の違法リスクに注意
紹介者と候補者の関係悪化に注意
リファラル採用では、不採用になった場合に紹介者と候補者の関係が悪化する可能性があります。
不採用の理由が十分に伝わらないと、社員が会社への不満を抱いたり、候補者が紹介者に気まずい思いを感じたりするため注意が必要です。
不採用の場合でも感謝を示し、選考理由をフィードバックしましょう。
紹介報酬の違法リスクに注意
リファラル採用で紹介報酬を設定する際は、職業安定法や労働基準法を順守する必要があります。報酬を高額にしすぎると、無許可で有料職業紹介事業を行っているとみなされる可能性があるからです。また、報酬制度を明記せずに運用することもコンプライアンス違反のリスクがあります。
不透明な紹介報酬は避け、法令に基づいた制度設計を徹底しましょう。
リファラル採用の手順
リファラル採用は、単に社員に「紹介してほしい」と呼びかけるだけでは成功しにくいです。制度設計やフォロー体制など戦略的な取り組みが必要になります。具体的な手順は以下の通りです。
- リファラル制度を設計する
- 制度の内容を周知する
- 候補者を紹介してもらう
- 候補者の応募・情報の受理
- 選考・面接を行う
- 採用決定通知
- 入社手続き
- オンボーディング
- 紹介報酬を支払う
- 制度の評価と改善を行う
リファラル制度を設計する
紹介から入社までのフローや採用条件、紹介者への報酬(インセンティブ)を設計します。
報酬は金銭以外にも、MVPの表彰、特別休暇、社員旅行など多様なインセンティブを検討できます。話題性のあるインセンティブを設定すると、社員のモチベーションにつながりやすいです。ただし、過度に高額な報酬設定は違法リスクを伴うため、職業安定法や社内規定に基づいてリファラル制度を設計しましょう。
制度の内容を周知する
リファラル採用制度を導入した後は、社員への周知が必須です。
社内メールやチラシで形式的に告知するだけでは、十分に浸透しません。社員が積極的に参加しやすいよう工夫が必要です。たとえば、説明会を開催し、紹介手順や推薦ツールの使い方を説明すると、リファラル採用に馴染みがない社員もイメージが湧きやすくなります。
候補者を紹介してもらう
社員が自身のネットワークから適性のある人材を探し、推薦します。
推薦プロセスが煩雑だと社員のモチベーションが低下しやすいため、スムーズに紹介できる環境を整えておきましょう。推薦フォームなどのリファラル採用ツールを導入すると紹介するための工数が減り、紹介のハードルが下がります。
候補者の応募・情報の受理
候補者が応募書類を提出し、採用担当者が選考に必要な情報を受け取るプロセスです。
この際、紹介者から補足情報を共有してもらうと、候補者への理解を深めやすくなります。また、ATS(応募者管理システム)を導入すれば、候補者の書類や選考進捗を一元管理でき、応募管理の負担を軽減できます。
選考・面接を行う
書類選考を通過した候補者に、面接や適性評価を実施します。
リファラル採用では、紹介者の推薦により候補者への期待が高まりやすい傾向があります。評価が甘くなるとミスマッチが生じる原因になるため、注意が必要です。公平な選考が行えるよう、事前に評価基準を明確にしておきましょう。
採用決定通知
最終面接を経て採用が決まったら、候補者に採用決定通知を行います。この際、候補者だけでなく紹介者にも結果を共有し、感謝の気持ちを伝えましょう。
また、不採用の場合でも、候補者と紹介者に対してフィードバックを行い、選考理由を具体的に説明します。候補者や紹介者が結果に納得しやすくなり、関係性の悪化を防ぐことが可能です。
オンボーディング
オンボーディングとは、新入社員が職場に馴染みやすくなるようサポートするための取り組みのこと。リファラル採用では、被紹介者が社内に知人を持つため適応しやすい傾向がありますが、スムーズな定着には入社後のフォローが必要です。
入社後の研修や定期面談に加え、紹介者と被紹介者を含めたウェルカムランチなどを実施すると職場に馴染みやすくなります。
紹介報酬(インセンティブ)を支払う
事前に定められた条件に基づき、紹介者に報酬を支払います。
リファラル採用ツールには、紹介報酬の管理機能を備えているものもあります。進捗状況を一元管理でき、報酬の支払いに関するミスを防止することが可能です。
リファラル制度の信頼性を保つためにスムーズな申請手続きと透明性のある運用を徹底しましょう。
制度の評価と改善を行う
紹介数や採用成功率、候補者の質、定着率などのデータを定期的に分析し、制度の評価と改善を行いましょう。紹介者のインセンティブが十分な動機付けとなっているか、社員の紹介意欲を妨げる要因がないかなどの検証が重要です。
また、リファラル採用が成功した場合は、成功事例を社内で共有することで、ほかの社員の紹介意欲を高める効果が期待できます。
リファラル採用にかかる費用
リファラル採用は、採用コストの削減に効果的な手法ですが、以下のような費用が発生します。ただし、これらの費用は必須ではなく、採用戦略や進め方によって異なります。以下は、リファラル採用で想定される費用の例です。
- 社員への紹介報酬(インセンティブ)
- 候補者との交際費
- 専用ツールの導入費用
社員への紹介報酬(インセンティブ)
リファラル採用では、制度に則って紹介者に報酬を支払います。多くの企業では 5万〜30万円に設定されることが多いです。また、金銭報酬に加え、表彰や特別休暇などのインセンティブを組み合わせるケースもあります。
候補者との交際費
リファラル採用では、紹介者や候補者との会食や社内見学時に軽食を提供する際に費用が発生します。食事以外にも、社員が候補者と交流するためのイベントなどの交際費がかかる場合もあります。
専用システムの導入費用
採用規模によっては、リファラル採用ツールの導入がおすすめです。候補者の経歴を簡単に入力できる推薦フォームや進捗管理機能、インセンティブ管理機能などがあり、採用の効率化につながります。
導入には初期費用や月額利用料が発生するため、費用対効果を検討したうえで導入しましょう。
リファラル採用がおすすめの企業
リファラル採用がおすすめの企業の特徴は以下の通りです。
- 企業文化が確立している企業
- 専門スキルが必要な企業
- 採用コストを削減したい企業
企業文化が確立している企業
企業文化が確立している企業は、リファラル採用で効果を発揮しやすいです。
社内のミッションやバリューが明確で、社員が共通の価値観を持って働いている企業では、紹介者が企業の魅力を正しく伝えやすいからです。候補者は入社後の環境を具体的にイメージしやすくなり、ミスマッチによる早期退職が低減します。
専門スキルが必要な企業
専門職は、一般的な求人広告では優秀な人材を見つけにくいため、社員のネットワークを活用することで効率的な採用が可能です。
たとえば、業界内のつながりが強いITエンジニア同士なら、スキルや適性を理解した上で推薦できるため、自社に合う人材を確保しやすくなります。
採用コストを削減したい企業
リファラル採用は、スタートアップ企業のように限られた予算で採用活動をしたい企業におすすめです。
求人広告の掲載費用や人材紹介の成功報酬が不要なため、採用コストを削減できます。社員のネットワークを活用することで、外部費用を抑えつつ、自社に合う人材を採用できます。
よくある質問
縁故採用との違いは?
リファラル採用って縁故採用とどう違うの?
リファラル採用は社員が持つ幅広い人間関係を活用しますが、縁故採用では企業の重要人物の親族や近しい友人が対象。選考プロセスよりも関係性を重視して採用します。縁故採用では、多様性や客観性の面で課題が生じる点がデメリットです。
リファラル採用は違法?
リファラル採用が違法になる場合って?
リファラル採用自体は違法ではありません。しかし、紹介報酬が過度に高額な場合や、不透明な斡旋行為が行われていると、職業安定法や労働基準法に違反する可能性があります。関連法規に基づき、適正な運用を行いましょう。
まとめ:リファラル採用(社員紹介制度)で採用を成功させよう
リファラル採用は、社員のネットワークを活用して人材を紹介してもらう採用手法です。採用コストを抑えて優秀な人材を採用できるため、多くの企業が導入してます。しかし、リファラル採用のノウハウはまだ広く浸透しておらず、思うような成果を得られずに中断してしまうケースも少なくありません。
株式会社RYOMAでは、リファラル採用の導入支援サービスも提供しています。「リファラル採用を始めたいけど何から始めればいいのかわからない」「リファラル採用をしてみたけどうまくいかなかった」とお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
採用プランナー事業部責任者
担当プランナー藤村 滉大
経歴
RYOMA新卒社員第一号『現在採用プランニング事業統括責任者』
SES業界を中心に、創業期の企業から300名規模まで、採用戦略から採用計画を実行、最適化まで一貫してサポートを提供。担当企業様から約80%を超えるリピートを達成。
信頼と実績に基づいた確かな成果を重視しています。
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