せっかく採用した社員が、数か月で辞めてしまった
何が不満なのか、本当の理由がわからない
早期離職を防ぐには労働条件の改善だけでなく、現場で起きている心理的な課題や、採用プロセス全体を整えることが必要です。
この記事では、早期離職が起きる原因を整理し、定着率を高めるための具体的な対策を解説します。また、社員が長く活躍し続ける企業が実際に行っている施策も紹介するので、早期離職にお悩みの企業は参考にしてください。
早期離職とは?
早期離職とは、入社してから3年以内に離職することを指します。
厚生労働省による「新規学卒就職者の離職状況調査」によると、新規高卒就職者の新卒入社後3年以内の離職率は37.9%、新規大卒就職者の33.8%に上りました。

また、ITエンジニアの有効求人倍率をみると、常に10倍を超えており、エンジニア1人に対して10社以上の求人が存在する「売り手市場」となっています。

出典元:経済産業省「IT人材需給に関する調査」
人材の供給が難しい企業にとって、早期離職は大きな痛手となります。そのため、自社の定着率を高めるための仕組みづくりが必要です。

早期離職につながる現場の課題
早期離職には制度や待遇だけでなく、日常の業務環境に潜む要因が影響します。ここからは、離職の原因となる現場の課題を解説します。
- 入社前後のギャップによるミスマッチ
- 労働条件や職場環境に不満がある
- 採用時の見極め不足
- キャリアパスが不透明
入社前後のギャップによるミスマッチ
早期離職の要因のひとつが、企業側と新入社員の認識のズレによる採用ミスマッチです。
エン・ジャパンによる「就業前後のギャップに関する調査レポート」によると、ギャップが原因で仕事を辞めた人のうち、87%が1年以内の早期離職をしている結果となりました。

採用ミスマッチは、早期離職の大きな原因となりますが、事前の対策によりリスクを減少させることが可能です。
採用ミスマッチ対策については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
労働条件や職場環境に不備がある
給与、勤務時間、休日日数などの労働条件が入社時の説明と大きく異なると、社員は不満を抱きやすくなります。残業や休日出勤の常態化など、プライベートな時間を業務に費やす機会が多いと「長く働くのは難しい」と感じる原因となります。
同業他社と比較した際に「明らかに条件が劣っている」と感じると、より良い環境を求めて転職するきっかけとなるのです。
採用時の見極め不足
採用時に候補者の見極めができていないと、早期離職につながります。
「成長ベンチャー企業の採用実態調査」によると、「採用しても1年以内で離職してしまう、採用時の原因は何だと思いますか?」という質問に対し、回答者の77.3%が「面接における見極めができていない」と答えました。

採用基準が曖昧な場合や、面接官の主観が採用の可否に影響していると、「現場が求める人材と違っていた」というズレが生じやすくなります。
社員自身も入社後に居心地の悪さを感じてパフォーマンスを発揮できず、早期離職につながります。

キャリアパスが不透明
「この会社で働き続けて、数年後に自分がどうなっているか」という将来像が描けないと、社員は不安を感じます。日々の業務が自身の成長やステップアップにどうつながるのかが不明確だと、次第に焦りが生まれるからです。
とくに、将来の目標となる先輩がいなかったり、キャリアに関する定期的なフィードバックがなかったりする職場では、将来への不安から転職を決断する傾向が強まります。
社員が早期離職を考える主な原因
新入社員の早期離職にはさまざまな背景がありますが、とくに以下の点は多くの企業に共通します。課題背景を知ると、自社の早期離職の原因を整理することが可能です。
- 組織での存在意義を実感できない
- 心理的安全性が確保されていない
- 経営層に余裕がなく、急に方針が変わる
- 業務負荷に対して正当な評価がない
- 悪影響を与える人物を放置している
組織での存在意義を実感できない
数値目標や納期に追われる現場では結果が重視され、個人の働きやプロセスが軽視されがちです。
上司が目に見える成果のみにフォーカスし、日々の努力への承認やフィードバックが不足すると、社員は「ここに居る意味があるのだろうか」と感じます。
社員が組織での存在意義を見失うとパフォーマンスが低下し、さらに結果が出なくなる負の連鎖に陥ります。その結果、職場への帰属意識を失い、より必要とされる環境を求めて離職を考えるようになるのです。
心理的安全性が確保されていない
心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや感情を否定されることなく、安心して発言や行動ができる状態のことです。
心理的安全性が保てる職場では、ミスをしても「次につなげよう」と前向きな議論ができ、わからないことがあってもすぐに質問することが可能です。
逆に、心理的安全性が低い場合、「叱責される」「無能だと思われるかも」といった不安から質問や報告を躊躇します。ストレスや孤立感が深まり、社員が早期離職を決断する要因になります。

経営層に余裕がなく、急に方針が変わる
経営層が精神的な余裕を失うと、冷静な判断が困難になります。ベンチャー企業によくあるのが、市場や競合の変化に対する焦りから、十分な説明がないまま急に方針を転換するケースです。
入社時に共感した理念や事業が経営側の都合で変わってしまうと、社員は「この会社はどこへ向かっているんだろう」と不信感を募らせます。
不透明な意思決定は、結果として社員の意欲や信頼を低下させ、離職につながります。
業務負荷に対して正当な評価がない
実際の業務負荷と評価制度が合っていないと、社員のモチベーションが下がります。
たとえば、新人教育を任されて業務量が増えたにもかかわらず、評価の対象が営業の数字に限定されているようなケースです。教育にリソースを割くほど自身の業績を上げにくくなり、結果として貢献度の高い社員が評価を下されてしまいます。
役割の拡大が評価へ反映されない環境では、意欲の高い社員ほど不公平感を募らせ、離職を考えるきっかけとなります。
悪影響を与える人物を放置している
明らかな問題行動をとる人物だけでなく、ブリリアントジャークも周囲に悪影響を与えます。ブリリアントジャークとは、高い成果を出す一方で、周囲に高圧的な態度をとったり、組織の協調性を乱したりする人物を指します。
こうした存在を「仕事ができるから」と黙認すると、周囲の社員は精神的に疲弊し、モチベーションも低下します。とくに、新入社員にとっては耐えがたい心理的負担となり、早期離職のきっかけとなります。

早期離職を防ぐための具体的な対策
早期離職の防止には、採用前から入社後までの各段階に応じた取り組みが必要です。ここでは、実務で活用できる具体的な手法を解説します。
- 採用ブランディングで自社のスタンスを伝える
- エントリーマネジメントでミスマッチを防止
- 面接で企業と本人の目的をすり合わせる
- オンボーディング体制を整備する
- 定期的な1on1面談でフォローする
採用ブランディングで自社のスタンスを伝える
採用ブランディングとは、自社で働く魅力を発信し、「この会社で働きたい」と思ってもらえるブランドイメージを築く取り組みです。
自社の理念や企業文化などのスタンスを正しく伝えることで、価値観に共感した人材が集まりやすくなるメリットがあります。
社員の価値観が企業の方向性と一致していれば、日々の仕事に高い充実感を得られます。その結果、会社へのエンゲージメントが高まり、長期的な定着と活躍につながるのです。
採用ブランディングの基本は以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
エントリーマネジメントでミスマッチを防止
エントリーマネジメントとは、求人募集から入社までのプロセスを整えることです。
どんな人材を採用するか、評価基準に偏りがないか、候補者に企業文化を正しく理解してもらえているかなど、採用の精度を高める役割を担います。

成長ベンチャー企業の採用実態調査レポートによると、面接官ごとの評価のバラつきを感じる経営者は63%にのぼりました。主観を軸にした定性的評価は、評価精度の低下を招き、採用ミスマッチを誘発する原因となります。
また、エントリーマネジメントでとくに重要なのは、候補者に自社の良い面ばかりではなく、課題も伝えることです。双方の認識を調整することで、入社後のギャップを未然に防ぎ、定着率の向上につながります。
面接で企業と本人の目的をすり合わせる
面接は候補者を見極めるだけでなく、入社後の目的を企業と候補者の双方で一致させる場でもあります。
「何を実現するためにこの会社で働くのか」という動機を明確にし、それが自社の環境で叶えられるものなのかを突き合わせるためです。この段階でズレが判明し、選考辞退につながることもあります。
しかし、入社後に「やりたいことと違う」と気づいて早期離職する事態を避けるためには必要なプロセスです。

オンボーディング体制を整備する
オンボーディングとは、新入社員がスムーズに業務に馴染み、職場に定着するための取り組みのことです。
具体的な施策には、入社後の研修や定期的な面談、メンター制度による精神的なフォローなどが挙げられます。
こうした体制を整えることで、新入社員が現場の悩みを相談できる関係性を築き、組織への帰属意識を高めることが可能です。職場との信頼関係が早期に構築されれば、不安や孤独感による離職を防げます。
定期的な1on1面談でフォローする
早期離職を防ぐには、社員の未来に焦点を当てた1on1面談が重要です。面談では、業務報告や進捗確認だけでなく、マネージャーが「社員が数年後になりたい姿」を把握します。
これにより、日々の業務が本人のキャリアや自己実現にどうつながるかを言語化し、現在の仕事が自身の成長に直結していると実感してもらいます。
会社と社員自身の方向性が合っていると感じてもらうことで、将来への不安による離職を防ぐことが可能です。

定着率が高い企業の共通点
早期離職が少ない企業では、日々のコミュニケーションや評価の基準に、社員が「ここで働き続けたい」と思える取り組みがあります。実際の現場で、定着率の高い企業が実践している施策を紹介します。
- 個人の成長を支援している
- 人事ポリシーを整え、方向性を合わせる
- フィードバックで仕事への意欲を高める
- 社員を信頼して業務を任せる
個人の成長を支援している
定着率の高い企業は、業務の目的を語る際の軸が「会社」ではなく「本人」にあります。
多くの職場では「会社のために成果を出してほしい」と企業側の都合を伝えがちですが、これでは社員の意欲を維持できません。
一方、定着率の高い企業では「本人の目標達成にこの業務がどう繋がるか」と、社員個人を軸にして伝えます。
一人ひとりの成長を支援する姿勢が、パフォーマンスの向上と長期的な定着につながるのです。
人事ポリシーを整え、方向性を合わせる
企業の方向性や社員の働く目的がバラバラな状態では、組織への帰属意識の維持が難しくなります。
こうした価値観のズレを防ぐには、求める人材像や評価基準を明確にした人事ポリシーの策定が重要です。
人事ポリシーを整備し、組織としてのベクトルを揃えることで、社員は自身の役割を正しく認識できるようになります。
また、採用段階で人事ポリシーへの理解を得ておくと、入社後のミスマッチを抑え、長期的な定着へとつながります。

フィードバックで仕事への意欲を高める
定着率が高い企業では、結果だけでなくプロセスを肯定するフィードバックが行われています。
数値目標だけでなく、企業の価値観(MVV)に基づいた行動を正当に評価する仕組みを取り入れているのが特徴です。
数値に表れにくい「理念に沿った行動」を称賛すると、社員は「自分の仕事が正しく認められている」と実感し、充足感を得られます。個々の取り組みを肯定し、フィードバックを継続する文化は仕事への意欲を高め、定着率の向上につながります。
社員を信頼して業務を任せる
離職の原因となるのが、細かく指示を出しすぎる「マイクロマネジメント」です。自分の裁量が認められない環境はストレスを生みやすく、社員の意欲を損ないます。
何かあれば本人から相談してもらう関係性を構築すると、社員は成功体験を積み重ね、自己効力感を抱くようになります。
定着率が高い企業では、社員を信頼して業務を任せる文化が根付いています。自律的な成長を促すためには、過度な干渉を避け、業務を任せる姿勢が欠かせません。

早期離職対策に関するよくある質問
面接時の見極めのコツは?
面接時の見極めに重要なのは、面接官の主観による定性的評価ではなく、客観的な採用基準に沿った定量的評価です。印象をもとにした「フィーリング採用」は評価にばらつきが生じ、ミスマッチを招きます。

早期離職対策にかけるリソースがない場合は?
早期離職対策にかけるリソースがない場合は、外部の専門家に実務を委託する「RPO(採用代行サービス)」の活用が有効です。プロの知見で補完することで、社内リソースを維持したまま質の高い採用体制を構築できます。
SES業界で早期離職が起きやすい理由は?
SES業界で早期離職が多い理由として「イメージと違っていた」「思っていた案件に配属されなかった」などの入社前後のギャップが多く挙げられます。
SES企業の採用にお悩みの方は以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ|早期離職を減らし、定着率を向上させるために
定着率の向上には、採用プロセスから入社後のフォロー体制までを戦略的に整えることが重要です。
とはいえ、「自社の施策は合っているのだろうか」「何から始めればいいのかわからない」とお悩みの人事担当者も多いのではないでしょうか。
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